クリスマスが来るから
鵜飼千代子
大きなまつぼっくり
拾い集めて
クリスマスツリーを作るの
おもむろに鞄から
黒いゴミ袋を取り出して
なんでそんなモン
持ってきてるの
なんて言葉
張り倒して
小さなクリスマスツリーを
作るの
まつぼっくりを左手に持ってね
少し肘が曲がるくらいに伸ばして
目の高さでくるくるまわすの
一番綺麗に見える角度
イチバン綺麗ニ見エル角度
おまじないを
唱えながら
ゴールドのスプレーで
程よく金色の雪を降らせてね
九十九里の海岸で拾ってきた
白いドレスのような貝殻の上に
載せて
糸の切れたネックレス
薬の小瓶に 閉じ込めておいた
ビーズたち
まつぼっくりに
付けてあげて
100円コーナーで買い集めた
瑠璃と黄色と水色のビー玉を
貝殻の何処に置こうか
なんて考えて
ほら 雪原の
大きなもみの木になる
捨てられなかった古座布団の
仕舞っておいた古綿は
うすく 伸ばして
雪にしよう
光が当たると
きっと綺麗だよ
きらきらひかるよ
そうしてね
あなたの部屋に届けるね
わたしが作った
クリスマスツリー
芸術とは程遠いけど
わたしがたくさん
詰まってる
残りのまつぼっくりは
金の雪だけ降らせてね
わたしの部屋のあちこちに
ピアノの上にも
チェストの上にも
クローゼットの上にも
飾っちゃおう
ほらね
あなたの家から伸びてきて
街の灯りを電飾にした
ふたりだけの
宇宙一の
クリスマスツリーが
できる
1998.11.26. YIB01036 Tamami Moegi.
初出 NIFTY SERVE FPOEM