溺れる肴
高梁サトル

行き過ぎた権利主義や個人主義
自己責任という名の帰属錯誤
民主主義に強い指導者を求めるは墜落の予兆

野を流離った苦行者たちや
石畳に血豆を潰した思想家たちが
一生を費やし学んだものはなんだったのか
種として目覚めた夜明けから
どれくらい歩いてこれたのだろう
一秒と千年の差はなんだろう

知識がいくら感覚をみがいたとしても
運命まで左右しないというのなら

人間は海で溺れる魚だ

白日の下に晒されるべきは
その自戒の念なき姿である
これが緩やかな世界の自殺なら
明け方にうつらうつらと覚者の見る夢なのだろう

おそらくは大勢にとって真実とは無意味なのだ
それについて話すのも躊躇われるほどに
嘲笑さえ漏れるほどに


自由詩 溺れる肴 Copyright 高梁サトル 2010-11-20 23:21:57
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