箱庭
nonya


駅前のメインストリートには
すずかけの木を等間隔にはめ込んだ
ビルディングは高さをそろえて
白色と茶色と灰色に塗りわけた

踏切の遮断機は配線が切れているから
決して開くことはないけれど
綺麗に並べた自動車は
どうせ行先も決まっていないのだから
そう心配することはない

山の斜面には深緑色の粉をまぶして
いかにも懐かしい陰影をつけた
麓はできるだけ平らに削って
考えるのが面倒臭かったから
寸分たがわぬ建物を何個も置いた

鉄橋の下を流れる川は
まだ色をつけていないからこげ茶色のまま
作りかけの高速道路はもう飽きたから
街のはずれでいきなり途切れている

うっかり机の角にお尻をぶつけたら
折り重なってフィギアが倒れた
どうやら接着するのを忘れていたらしい

いびつな楕円形を描いて
疾走する列車を目で追いかけながら
僕がさっきから考えているのは
君をどこに置いたらいいかってこと

他のことなんて
もうどうだっていいんだから





自由詩 箱庭 Copyright nonya 2010-11-20 18:02:00
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