隧道ー那須野から塩原
……とある蛙

紅葉の山々
渓谷沿いの道はその時々の赤
その時々の黄
その時々の青
その時々の緑
山の頂の先には
幾分くすんだ青空
道のRは気にならず
正面に最初のトンネル

トンネルを抜けると
辺り一面は白く霞んだ異世界
疾走する車に水滴が付着するでもなく
フロントガラスに見える空間が
分厚く白い
その中に浮かぶ木々
その中に続く道
人の高さ程しか
上空間の見通しはなく
白い密室のような空間を
滑空するように疾走する不思議
ハドリアヌスの壷の中を
彷徨う孫行者

またトンネルが口を開けて待つ
トンネルは思いの外 長く暗い
オレンジの間接光に照らされた道は
ヌラヌラ輝き危険な誘惑を見せる
トンネルを抜けると
突然の陽光が
打って変って明るく鮮やかな紅葉が
朝日に映えて前面に迫る
山の秋 織なす山肌の色
赤青黄色橙朱に緑


自由詩 隧道ー那須野から塩原 Copyright ……とある蛙 2010-11-18 13:45:15
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