空の言葉
小川 葉
そらは
だまっている
なにかつたえたくて
だまっている
にくしみもかなしみもない
そらのことばを
うつくしい
あおにひめて
+
しょうがが
きいている
しょうがゆを
のみながら
もしかして
しょうがゆも
そんざいするのは
はじめてだから
+
さいぼうが
うごいている
わたしのいしに
かんけいなく
うごいている
わたしもまけずに
しんださいぼうの
おはかもたてずに
+
にっきに
かかれている
いじょうなしと
ちちのじで
ゆめをみただろう
らいねんのはる
うめぼしが
つかるゆめを
+
いつからか
こんなによごれて
せんじょうに
たっている
みおぼえのある
ひまわりが
かおから
たねをおとしている
+
ぼくとおなじ
なまえのひとが
なつやすみ
かわでしんだ
しんぞうまひだった
しぎょうしきでしった
そとはまだあつくて
せみがないていた
+
ろうじんになるなんて
しらなかった
ろうじんは
うまれたときからろうじんで
ぼくはずっと
こどものままだとおもっていた
おなじかっとうをいま
むすこがしている
+
まえにすすむことが
たいへんだ
ずいぶん
いいわけばかりしてきた
いいわけという
バックギアを
トップギアに
かえて
+
ぼくがかくことは
うそっぱちです
うそっぱちでよかったら
よんでください
そして
よんでいるひとよ
やさしいうそが
だいすきです
+
ちりょうは
おわった
もうするべき
ちりょうはない
あとはきみの
そのちからで
いきようとする
そのちからで
+
へりくつは
もういらない
りくつなら
いい
りくつは
すきだ
へとともに
すててしまえるなら
+
はたして
りゆうはあるだろうか
ここにいる
というりゆうが
ことばは
べんりだけれど
それだけに
たよってしまって
+
いのししが
とっしんしてる
なにか
いみのない
なにか
にむかって
みつからない
ことばをさがすように
+
いいようのない
うつくしさ
それをひとは
いのちという
たとえ
いのちがなくても
そこにいのちが
あるように
+
あいうえお
だれもしらない
うまれるまで
だれもしらない
まだ
ことばにならないもの
まだ
いのちにならないもの
+
ふるさとにかえると
りんごのにおい
ここに
きていたのだ
ふるさとを
すててきた
きみのにおいが
ふるさとのにおい
+
デフォルメされたのうどうを
がようしにひく
それからがいそがしい
たはたやちいさなしゅうらくや
のうどうをあるいてかえる
かつてのわたしの
センチメンタルは
デフォルメできずに
+
そつぎょうしきのかえりみち
さいごだから
あるいてかえった
さんりほどあるみちを
そつぎょうしょうしょは
どこかにすてて
ゆきどけのはる
みあげると
てがとどきそうだった
はじめてしった
そらのことばで
ぼくはきみに
さよならをいった