家事手伝い
朧月

いつかは死ぬのにね
母が言ったからどきりとした

いなくなった恋人を
そろそろまた恨み始めていたから

母は
死ぬということと
家の中のあれこれとを
同じところに平気で並べる

夕食まえのテレビでは
かわいそうな子供の話を流していた
母の
記憶の中の私は
どのへんから鮮明なのだろう

母はいつも子供のころの
話をするのだが
いつの時代の話なのか
わからないまま終わる

母と私が並んで作った
夕食を食べるときには悲しい話は
しないルールになっていた

ときおり奇跡的に
おいしい味になっていて
隠し味になにを入れたのと
きいても母は首をふる



自由詩 家事手伝い Copyright 朧月 2010-11-15 18:30:19
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