ワン・ショット
ホロウ・シカエルボク





緩慢な意識の繭に
囚われたまま一日が過ぎた
薄曇りの
湿気た生温い温度のせいか
それとも
もっとなにか他の
避けがたい要因のせいなのか
朦朧とした正気で
オレは一日を綴る
記すことがないと
感覚で綴ればよい
書くべきことと
書けることは
区別しておけば
扱いやすい


脳髄に11月の霧
薄く拡散して
覚醒した睡魔のような…
オレは何度も同じ話をしている
どんなふうに話せば
誰かが手を叩いてくれるのか?
モーションとして
どんな綴りが適当なのか?
いまこの時間に至っては
そんなことにすら
上手く判断がつけられない
心得ていることなんかで
すべてが滑らかに進むわけでもないけれど


碇を下ろしたまま
出港しようとする船だ
けつまずいたみたいにスタッカートを踏んで
港中のやつらに笑われる…
面舵いっぱい、ヨーソロー
オレはふざけて声を上げるが
乗っかってくれるヤツなどどこにも居ない
この一日の終わりごろには
オレは寝床に怒りを下ろすだろう
このささやかな24時間に留まり
なんとか自分の心魂を
なだめて明日へと進むために
バイキングはいつも歌をうたってる
頭の片隅に引っかかってることに
「先送り」だの「返品」だのと
余計なラベルを張り付けて回らずに済むからだ、ヨーソロー


鮮やかな白色の
100ワットの真下
いい加減に上手い眠りでも覚えてみちゃどうだいと
長年連れ添った寝床が小馬鹿にするようにヨレている
オマエみたいなペッシャンコのヤロウになにが言えるんだと
半ば本気のイントネーションでオレがやりかえすと
ヤレヤレという顔をしてそれきり押し黙った
そこらへんのヤツらよりも空気を読むのが上手なのさ
結局のところこいつはオレと同じ温度と臭いを
毎夜共有しているのだし
死んだように眠れるベッドが欲しいね、と
聞えよがしにオレは呟いてみる
寝床が浅い眠りの原因ならね…、と
慎重な上司みたいな口調でやりかえされる


ここんとこずっと、明日の天気予報を知らない
降っても晴れても演じる役割は同じで
そして脚本家はどうしようもない能ナシだ
オレは鼻をツマみながら
前にも言ったことのあるセリフをゆっくりと吐く
黙っていても楽しいことがあるのならそれが一番いいが
だけどオレはラッキーな出来事じゃたぶん満足は出来ない
この訳の判らない停滞と
タメ張るぐらいの確かな結果を
どうにかして築かなければ
どこかに反響するようなものじゃなくていい
オレの気が晴れるようなものであればそれで
週末の世界はこのところずっと曇天だった
オレはそんなことに我知らずイラついているのかもしれない


パン、と頭を殴り飛ばしてピストル自殺のイメージで
声もなく俺は背もたれに倒れこむ
綺麗な白色の円形の蛍光灯は
相応のスポットというべき明るさを確かに心得ている
頭の中に打ち込まれた
空想の弾丸が中枢に達して
あー、と俺は呻き声を漏らす



いま、撃たれた…確実に






自由詩 ワン・ショット Copyright ホロウ・シカエルボク 2010-11-14 22:05:56
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