音楽会
吉岡ペペロ
ふつう、とはなんだろう?
ふつう、でないことに人はひとり傷ついている
ふつう、そんなものあるのだろうか?
俺はそれを見つけたのだろうか
ふつう、ではない人はどうしたらいいのだろう?
俺はそれも見つけたのだろうか
おばちゃんにせかされてお母さんのまえでピアニカを吹いた
休みのとこは口で言うからね、
お母さんは音楽会には来れないとのことだった
いちにさんし、にいにさんし、さんにさんし、よんにさんし、
じぶんのパートいがいは休みだ
いつもよりピアニカの音が響いていた
張り切ってでもいたのだろうか
ヒロはクラスで二番目に合格したんやで、
お母さんはすごいなあ、うまいなあ、そう言って涙ぐんでいた
彼女が泣くと残忍な気持ちになった
さいきん夜遅くウォーキングしていると何処からかピアニカの音が聞こえる
あのときの残忍な気持ちを思い出す
そういうじぶんにすりかわらねばいたたまれなかった
あのときの残忍な気持ちを思い出す
夜遅くもなると空気もいくぶん澄んでいる
町の音も間遠くしずかになっている
ふつう、とはなんだろう?
ふつう、でないことに人はひとり傷ついている
ふつう、そんなものあるのだろうか?
俺はそれを見つけたのだろうか?
ふつう、ではない人はどうしたらいいのだろう?
俺はそれも見つけたのだろうか?