粉雪 / ****'03
小野 一縷

未来
人造人間が リゼルグ酸ジエチルアミドを
舌下に吸収した時
解かれていなかった 魂の 謎の幾つかが
明らかになるだろう


部屋中の塵が惑星になって
光りながら ゆっくりと往来する
8:50 現在
朝 本当の 
昨夜の 吹雪のように 
ざらついた光
光の粒 光る粒子 透明な砂
冷たい 粉

仕組まれた 罠
確信犯のDJ

音という 薬物
それも イリーガルな
上物

- 車の音 - サイレン -
 
パトカー?
これも サンプリング?
トリップ ホップの?


ひんやり冷たい 白い砂の中
倒れて そのまま眠りに落ちた
瞳孔を全開に 開いたまま

意志を随分巻き戻して 
起きてみる
白い砂丘だ ここは
ただ
天井以外閉塞された 白い箱庭
ジオラマの世界

プラモの兵士になって
駆け回る 
ジオラマの世界
白熱灯が 熱く照りつける けれど
彼の視線よりは 弱い銃撃だ

回された 黒い穴
擦られた 黒い板
盗まれた 黒い声
仕組まれた鼓動だけ 重量の代わりに色が無い

ここは 落としたコインが鳴り止まない
リヴァーブの効きすぎたフロア
息苦しさの呼吸音は共震する

空白に ピアノの単旋律
雷鳴は 重く傾いで
鉄塔は 緩く揺らいでいる
鳴いている 捻れた電線
微かな 針の跳ぶ音

洗練された技法
犯罪的な手法
手さばきの 速さは冷たい

発信 誘ってる 苦味
アナログノイズの美
ヒプノティックなリピート
白く 泡立つ 冷たい高み

乾いた リズム
湿っぽい 鼓動より
タイトに 回る円
回転 
映画のフイルム・ワーク並に
切り貼りされる

リズム イズ リズム
鼓動の裏と表の中間だけに 潜む響がある
それを指揮棒で 操るのが指揮者
それを針で 穿り出すのが犯罪者

犯罪者は 眠れない
昼 鼓動を途切れさせては 
失神して 身体を休める


罠 ?

待って

誰 ?

雪原を 駆けてゆく 白い影
地平線の 光の 奥に 
滲んで 消えてしまった 
 
彼 ?

何度も此処へは 来ている筈なのに
呼び止める 言葉を 未だ持てずにいる

名前すら ついていない 彼を






自由詩 粉雪 / ****'03 Copyright 小野 一縷 2010-11-07 18:40:47
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