さきっぽの、夜
nm6
先端。ひねくれたぼくらは、落として割らないように気遣う手つきなので。鉛筆を眺めていると、とがっています。触れる表面のことを、甘美に思い出します。肌身でぼくを揺り動かすのは、電話帳を眺めればいくらかの人がいて、それでもそれぞれはいま繋がってなんかいない、物体だということ。削る、という行為の、緊張。玄関を境に、本棚をステップに。ここから、いかようにも飛び出せるのです。
さきっぽの、さきっぽの。ナウ、は暑くも寒くもなく。
ぼくは鼻先できみをなぞり、指先できみの匂いを思い出しています。
(ぼくは部屋のなかだ)
すれ違ったりどうなったりで、おもしろい散らばる本の終わりないことがスイッチオンオフ。起こり、机の上、散乱するページを開けば日常、ひとりで立つちからを。だれがどうやって決めるのか、ただそれぞれが食卓ならば。ぼくはリッチだ。ぼくはスマートだ。あたまのなかと、からだのそと。削る、という行為の、緊張。諦めることの深度と、喜ぶことの強度。甘くてだんだんに、溺れるのはひとり遊びだよ。
たのしんでしまえば、あたまを。
ぜんぶ花が咲くみたいで、それ、ひとつもない。
(部屋を出て、駅に着く)
サイン看板の円形が太陽だったことを、夕焼けがプラスチックの嘘みたいに黄色いことを、電車を3本見過ごして耽りたい妄想があることを。永遠にわからないままこの先の官能へ、目をカメラにして匂いにピントを合わせています。それでもそれぞれはいま繋がってなんかいない、物体だということ。削る、という行為の、緊張。いま白線の内側でループする君の身体のそこらじゅうに、ゆるやかな輪郭が落ちてそれとなく誘う月のぼんやりがあらわにする。
ぼくは、夜だよ。
さきっぽの、さきっぽの。終わりないことがスイッチオンオフ。
ぼくは鼻先できみをなぞり、指先できみの匂いを思い出しています。