白い豹
藤崎 褥

 僕は最近、自分の事を「岡山の白い豹」と呼ぶのに凝っている。
 と、言うのも単に白い車に乗っているからである。

 …昔から僕は物事を大げさに言うと、よく言われるが、この年になっても治らない。

 さて、その白い豹であるが、オープンカーである。
 購入前夜辺りは屋根が開くという事実に興奮して、なかなか眠れない夜もすごしがちなのであったが、そういった甘い夢は意外と容易く打ち破られる事となった。

 このオープンカーという乗り物、意外に欠点が多いのだ。
 まず第一に屋根を開けられる機会がそれほど無いのである。

 まず、降水確率0〜30%までである事が重大である。
 路肩で慌てて幌を装着するのは、ダサい。また、場所によっては車をよけるところまで車という文明機器に乗りながら雨に打たれるという、ちょっとした矛盾に苛まされる事になる。
 下手をすれば、カーステなどがノイズなどを奏で始めるという、困ったシチュエーションも考えられるのである。オープンカーにとっては天気予報の確認は重大なテーマである。
 僕もさりげなく、携帯電話の有料天気予報サービスを受信しており、最低でも一日に四回の最新の天気予報が配信される環境に居る。この程度はオープンカーの維持費の内なのである。

 そして次に重要なのが気温である。
 意外と知られていない事実だが、オープンカーの最大の敵は暑さである。オープンカーはその用途から、屋根を外しても、それほど風が入らないように作られている。
 なので寒い時には、屋根を開けてもヒーターを直接体に当たるように吹かしておけば、意外と平和である。
 だが、暑さだけは上からやってくる。逃げ場が無いのである。
 そして、文明機器の中で熱中症に苦しむという、ちょっとした矛盾に苛まされる事になる。

 では、春や秋は平穏なのか?
 …実はそうでもない。

 春は花粉や桜、秋は虫や枯れ葉が天より舞い降りてくる。
 意外にオープンカー乗りは晩秋から冬を愛好するのである。

 更にバスが余り居ない道を選ぶことも重大である。
 屋根が無い為に周囲から丸見えなのは仕方ないとしても、やはりバスのような完全に真上から多数の視線を浴びるのは、なにやら不穏な雰囲気を感じずにはいられないのである。フッと顔でも上げようものなら、不特定多数の人と視線が合ってしまう。

 なかなか、オープンカーも楽ではない。


散文(批評随筆小説等) 白い豹 Copyright 藤崎 褥 2004-10-23 19:41:40
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