気まずいア・イ・ツ
藤崎 褥

 どのような社会に居たとしても、やはり人間関係というものは難しいものだが、特に男が苦手とする人間関係がある。

 それは「彼女の友人」である。

 彼女の友人の中にも幾つかパターンがあり、中には本当に仲良くできる人もいるのだが、本当に「彼女の友人」でしかない人物は非常に気まずい。
 基本的には他人である。
 たまに話題に登場したりもするのだが、距離感から言えば見知らぬ他人でしかない。

 しかし、である。
 たまにやってくるのである。
 ちょっと出掛ける時になんかに「明日、○○ちゃんも連れて行っていい?」と、質問の形式を取った決定事項が伝えられる。
 そして翌日に待ち合わせ場所には見知らぬ他人が馴れ馴れしい顔で手を振って待っていてくれたりするのである。
 基本的には車などの狭い空間の中に見知らぬ他人が居るというだけでも気まずいのだが、男はこうした人物と適度な関係を築かなければならないのだ。

 例えば僕が黙りこくって、彼女と友人の二人で喋るようなシチュエーションにしたとする。すると友人は「あの子の彼氏、なんか黙ってて暗かった。ホント、気まずかったぁ」等と、彼女の友人の友人辺りに報告するのである。
 そして更には彼女から「ちょっとくらい喋ってよ、気まずいなぁ、本当」と、明らかに一番気まずく孤独な思いをした僕が気まずいという言葉を浴びせかけられる羽目に合ってしまう。

 かといって、頑張って喋ったりするのも不正解なのである。そんな事をすると友人は「あの子の彼氏、なんかうるさくってうざかった。ホント、疲れたぁ」等と、彼女の友人の友人辺りに報告するのである。
 そして更には彼女から「今日、なんか不自然だったよ」と、努力を否定される羽目になり、僕は心身ともに疲れ果ててしまうのである。

 どちらにもならず、当たり障りの無い関係を築くというのは意識的に行なおうとすると、非常に難しい。
 しかし逆に彼女は気楽なもので、男の友人と会う時に連れていても、黙っていれば「清楚」などという、なんだか奇麗そうな言葉で語られ、喋れば「明るくて可愛い」等と、明らかに男の場合と違う言葉で語られるのである。
 男は女に弱い生き物だとつくづく思う。

 …しかし、なんとかならんか、彼女の友人のあの試験官のような視線…。


散文(批評随筆小説等) 気まずいア・イ・ツ Copyright 藤崎 褥 2004-11-18 21:38:33
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