写生
あおば

                       101028



写生する煙の
変わりようのない醜態から
デッサンする余裕のない状況を
忌避しながら
ガタガタと埃を巻き上げて
凸凹道をバスが走る
ガソリンからジーゼルへ
使用燃料の変更に
無抵抗に
従った経営者が
ウイスキーで乾杯しているとか
ビールで我慢しているとか
凸凹道を走りながら
バスは考える
写生する原野は夢想の産物
幻想的な夕刻にも
ガス欠を恐れないバイクが
ヘッドライトを煌めかせ
大きな荷物を積んで
真っ暗な闇へと突き進む
転倒を恐れない勇者のみが
暗い夜道を走る
おいおいどこにゆくのだ
寝惚けたセリフを呑み込んで
のっそりと立ち上がり
煤けたガラス越しに後ろ姿を見送る寝間着姿の若い男が写生する
典型的な秋の夕暮れ
鳴き止まない虫の音が腹の虫の情緒をなだめ
写生できない理解不能の真っ暗闇を呑み込んだ



自由詩 写生 Copyright あおば 2010-10-28 22:29:37
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