数字
パスカル

数字

数字を祝うことはばからしいことだと思っていた

東九条でもよおされたある晩の鍋会のこと
とつぜん友達が少しはにかみながら
今日は数字の日なんですと言った
二十八回めの数字の日なの
そしたらあなたは鍋代金いらないよと僕
あたし数字を祝うことにしているの
この年齢になると数字を祝うことなんて少なくなるから
恥ずかしがらないで自分から自分を祝うことにしているの
自分でもちよりパーティを開いて自分は作らなかったり
ご飯会に参加して実は数字の日なのって言ったり
そうやってお祝いしているの
少し早く立つ彼女の帰り際に
数字の日おめでとうのあたたかい合唱

このような数字との向き合い方もある

それで僕は三十二回ぶんの数字との向き合い方を総括しようと思って
端麗グリーンラベルを片手に思い出してみたけれど
その一回めはもはや思い出せなかった
よりによってまずいところからはじめてしまったなと思って
ビールがよく進む
逆からはじめようかなと思いなおして
三十二回めの数字との向き合い方から総括しはじめる

子宮の中にひとつめの数字をかかえた人たちにとって
数字の日はまた別の意味をおびるのかもしれない
三十一回めの数字との向き合いをした友達
三十一回前の今日母がわたしを産んだ日だと思うと感慨深いです

このような数字との向き合い方もある

沖縄から帰る飛行機の中で僕と同じように数字が嫌いだった友人が言った
数字を祝えない人が数字を祝うようになるということはどういうことなのでしょうか
きっとそれは偶然にして必然なんだろうねと僕

三十一回めの数字を迎えて一回めの数字を子宮にかかえた彼女のために
内モンゴルから来た出稼ぎ労働者のおじさんが教えてくれた
祝いの餃子をつくろう
少し遅めだけれど許してくれるにちがいないから



自由詩 数字 Copyright パスカル 2010-10-27 10:11:02
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