おっぺけぺー
鵜飼千代子
額縁だった庭に景色が戻ってくる
寂しい程に整えられた装置は
演歌師が
おっぺけぺーを
捻る、
舞台であった
もうすぐ演歌師がいつでも住まう
庭になる
説明のいらない
「ああ、いらっしゃいますね」
という、
景色に
まもなく変わる
ナレーターの必要の無い風景
「おわかりになりませんか?」
で、
微笑むことの出来る景色
乗り越えたのだ
塀の中の、
自然に
花
乱れる
景色へ
*
肩車から見る、知らない世界に
またひとつ知ることに
驚きと尽きない好奇心を抱え
行くのだ
愛しいものを
鈴虫の雌が排卵の為に雄を喰らうように
取込むのだとしても、
行くのだ
双顔になって、行くのだ
望むのは
お盆の上のしあわせ
塀は結界でもあるけれど、
結界が、何を閉じ込めているのかは
それぞれ
人間界に、魑魅魍魎を差し挟まない為に
結界が作られるというのが普通で
結界の内が楽園とは聞いたことが無い
けれど、
秘密の花園のような
こっそりと
ね、
そんな風に
おっぺけぺーの演歌師が
流しているお庭に
迷い込んでしまうって
楽しくないですか
*
わたしは、そんなところに住んでいます。
そんなところから
こっそり、通信します。
もう、
散々踏みつけられた
わたしたちへの
メッセージを。