少女詩 さいごの日曜日
salco

晴れ渡った空の青が濃いのは季節の分かれ目だから
あたしは出かけなければならなかった
剥離は目撃しなければいけないのに
お父さんは寝転がってゴルフばかり見ているし
9月さいごの日曜日だからと言って
お母さんは朝から衣替えに没頭しているし
弟は従兄達とジャパン・ブルーで日産スタジアムへ
行ってしまったし
友達は彼氏と遊園地や川原に行ってしまったか
ふてくされた顔で家族と近場の旅館にいる
あれがさいごの日曜日だった
あたしはだから出かけなければならなかった
空を見に
空が深く、朝晩が冷え込むのは
冬になって行くからなので
秋なんて季節は本当には存在しない
思い出になるだけの事実に死骸が残らないように
死滅への準備期間に名前なんかありはしない
あるのはただ、さみしさだけ


失われ行くものは目に焼きつけなくてはいけない
そうしないと、なかったのと同じになっちゃうでしょ?
それで、歩いていたら声をかけられた
それからホテルで恋を撮られた
彼はいれずみだらけで、裸さえ着ているみたい
背中に渦巻く暗雲を大きな龍が昇って行く
でも実際は動いていない 
わずかな身悶えだけ
皮ふに飼う別世界に自分の魂を連れ去りたい男
まさしは暴力団員だと後でわかったけど
やくざが若い男で、竹下通りを歩いているなんて
まさか思わないでしょ?
あたしのお腹に咲いた赤い花
愛の痛みは女の子を猛獣にするって、知ってた?
あれは癖になる 
麻薬だから やさしい声も
暴力団員と付き合うなんて、レディースの子か
水商売のひとだけだとあたしも思っていたけど
さみしい女は皆そうなのだとわかった


家に存在しない愛を知れば、もうさみしい子も存在しない
それで、家を出た
やり方を教わって、今は彼を幸せにするために
男が欲しがる季節を売っている
だって冬には火が、夏には水が恋しいものでしょ?
お墓を花で飾るように
若ければ若いほど、女は値段が高いのよ
だって、すぐにいなくなってしまうから
私服とか、中には危ない客もいるから気は抜けないけど
すごくがんばった日はごほうびを打ってくれる
問題じゃないのよ、たかはしまさしが本名かどうかなんて
道を歩くのに名前なんか意味ある?
2人が幸せでいる方法をさがすのが大切
あたしも名前はとっくに捨てた
愛する心が主語だから
あれがさいごの日曜日だった
娘というお人形がいたさいごの日
見たこともないほど空が青かったから
見ないといけなかったの


自由詩 少女詩 さいごの日曜日 Copyright salco 2010-10-20 21:52:22
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