十月夜の四方山話
小池房枝

他のどの白い花木にも思わない山茶花だけが降る雪に似てる

結納を終えほっとした友の父「本とマンガは全部持ってけ」
 
落ちたザクロ割れ目ざっくりぎっしりとダリのルビーがのぞいて見えてる
 
透き通るラピスラズリの空低く北を見つめて一人立つ月
 
一人だと思った月のかたわらに赤いアンタレス下るる大火
 
ヒガンバナ朱花しゅかは見事に朽ち果てて葉が出て来た今あとかたも無い
 
秋咲きの黄色一重の山吹が身を差し伸べて雨受くるさま
 
雨あらば直ぐに水かさ増す川が当然となって久しき大地
 
秋風に風鈴おろして型にして小さなプリンを一つ焼きます


一面に赤い茎した白い蕎麦の花揺れていた夏の思い出
 
真っ青な真昼の空に散ってゆく風船は風の軌跡を描かず

セイルアップされたセイルが透明で鱗粉の落ちたチョウの羽のよう

雨が屋根を叩く音さらに迸る滝となって落ちた先を打つ音
 
アカトンボ人差し指を差し出せば止まったあとで首かしげている
 
金木犀こないだ咲いていたけれど場所と姿は確かめなかった
 
星はなく月まっぷたつのハロウィーン空を駆け抜けるエナー小父さん

さとうきび咲いてる頃だね幾重にも銀色の丘を海へと連ねて

ホリックの侑子さんなら言うだろう「サヨナラ買います」委細面談


これはとても大きな秋だな北半球すべてが秋か猫も溜息

バビンカとルンビア二つの台風が突っ込んでいく秋雨前線

ドングリがこつんと私に落ちてきたもうどれがそれか分からないけど
 
ハロウィンが終ってからがクリスマス 気が早すぎるよミズキの赤い実
 
夜猫の目が真っ黒でまぁるくて何か言いたい人の目のよう

咲き終わった百合がふわりと佇んで歩かぬ姿も美しいこと
 
ねぇ鉄郎、メーテルがほら、眠ってる。静かな寝息、安らかな顔で。
 
あるひとはじぶんはやさしいとのことです
たしかになにもしたことなさそう
 
神無月まだ咲いているアサガオがもう咲いている午前二時半


冬星の只中双子の片割れに蹴られそうではないか火星よ
 
切り紙の黄色い星の形した葉を降らせている街路樹の名前

ねぇちょっと寄って行ってと言われても紅薔薇わたし出勤の途中

カメ、きみは、狭いところに嵌まっては身動きできなくなりたい願望?
 
よく晴れた朝は悔しい明け方に起きたらどんなに星空だったか
 
ぽんぽんとパレットナイフでポプラの木
バーントシェンナとディープイエロー

遠足も運動会もないけれど秋晴れなのでおにぎりをにぎる

熱々のアップルパイを冷や冷やのアイスクリームでいただく秋の日
 
淵をなして堰き止められていたらしいキンモクセイが昨晩決壊
 

よく晴れた明るい朝に猫が目を細めて無駄にやる気満々

十月の市民プールの午後五時は夕日に溢れた海のようです

いつだってもとめているがいつだってもめてるに見える誰のせいだよ
 
雲間からきらりと見える木星が月から零れた何かのようだ

forget me not 青き小さきこの花を四季咲きにしていかにせんとや
 
アンブロークンアロー 雪風 JAMの前にただ我は我 地球人類
 
駅員さんあなたが掲げるカンテラは灯台のようあなた自身も
 
命優先
何より優先
だけど書くことで生きてく人もいるから
 
花があって星も見えますわたくしの短歌は地球ここから宇宙そらへの報告 


短歌 十月夜の四方山話 Copyright 小池房枝 2010-10-20 21:21:42
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