喫煙
たもつ

 
 
帰りのバスの中で
母と娘と思しき二人が
楽しそうに童謡を歌っている
曲名も忘れてしまったし
所々歌詞も覚えていないけれど
一緒に声を出さずに歌ってみる
 
他に何もない停留所で降りる
バスは母と娘を乗せて
真っ直ぐな道を行く
ここが終点だというのに
 
バスは徐々に小さくなり
僕がバスだと思っていたものが
実はカモメだと知った
本当は海に
帰るつもりだったのかもしれない

僕は無性に煙草が吸いたくなった
あいにく、煙草もライターも
持ち合わせていなかった
何よりも
喫煙の習慣などなかった
 
 


自由詩 喫煙 Copyright たもつ 2010-10-18 22:07:11
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