理科室/わたし
桐谷隼斗
「あのね、
から物語は始まり、
彼女は電話をきったのです。
金木犀の香りの詰まった壜に、あなたの名前を書いてる、
「か・こ」
シャーレに
なつかしい-あなた
あたらしい-わたし
を
置いて、
窓から嘘を吸い込む/吐き出す
また、生きるのだ、
不覚にも振り向いてしまった。
青空の下で脈打つわたしたちの血は、
あきらめない
と決めた日から真っ赤に呼吸している。
半-透明のセロファン紙を引きちぎって春、
わたしはわたしを飾る形容詞を、
凝視する、
ため息のなかに真実が香る。
嘘を剥がす、ピンセットでつまんだ血が弾け肉がほころぶ。
誰もいない理科室で子供産みたい、
悩みが綺麗な曲線を描き、
とろける睡魔、午睡の予感。
一瞬のみだらな焔→「?」-顕微鏡で見た疑問符は打ち震え、つらそうなため息をついていたから真理は自分で見つけた方がよさそうだ。
わたしは?
だれか?
皮膚の1番みだらな部分に微笑む、吹奏楽部の演奏は法悦への序奏、わたしは信じてる。
丘の上で再びあえる、
わたしに。
早く染まれ。
毒が混じるだろ。
生きるとは再生か生成か、
「先生、小指に塩酸がついてます」「オレンジ色の石に赤い薬品」「フラスコのなかでもがいていることば」「反応」
大丈夫、
今、はらんであげるから。
先生、また愛していいですか。
わたしを」