脱走アドバルーン
明楽

最近アドバルーンを見なくなったね
そう君に言われるまで
アドバルーンと言うものの存在は
すっかり忘れていた

子供のころは百貨店や
ショッピングセンターの屋上
たまのイベントなどでしばしば目にした
それには目的地への楽しい期待を
幼心にむくむくと呼び起こす作用があった
あれを見ただけで何故
あんなにも気持ちがはしゃいだのか
四半世紀も経った今ではよく思い出せない
それどころか
今となっては一抹の淋しさ
物悲しさを感じてしまう

( あれはいつも逃げ出す機会を
( 窺っていたのではないだろうか?

ひとところに縛り付けられ
空に浮かんだ客寄せ風船
一見 気まま気楽そうでも
与えられた役割から逃れられない姿は
まるで そうだ

( 今の自分

季節はおりしも春の入り口
春一番に吹き飛ばされた、というならば
立派な言い訳にもなろう
もしか今
どこかの中空に浮かんでいるならば
脱兎のごとく
青空に向かって綱をぶち切れ
アドバルーン


自由詩 脱走アドバルーン Copyright 明楽 2010-10-17 19:32:19
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