氷河のながれ
吉岡ペペロ

大学のころ

ニュージーランドにひとり旅をした

レンタカーに寝泊まりし

ほんとテキトーに島を巡った

ときどき安宿にはいりシャワーを浴びた

クジラを見つめているとかいう

紫外線で顔がボロボロになったおんなと

行きずりのセックスをした

しかしあくまでもひとり旅で通すことにした

かってに無人のログハウスに泊まっていたら

おばちゃんに朝たたき起こされた

有名なやまの麓のホテルの中庭に

テントをはっていたら罰金をとられかけた

そのやまをためしに登ってみた

断崖絶壁をかべを這うようにして登った

河の激流の音が足もとに届いていた

たまに雪崩の音がした

氷河のくずれるのが眼下に見えた

その音はたよりなく聞こえた

氷は青かった

氷って青いのか

くずれおちた氷は青い河に収まっていった

河も青かった

ここで死んだら、

この河のながれにながされてしまうまえに

冷たさで絶命してしまうまえに

衝突で赤いからだを散乱させてしまうまえに

ここで死んだら、

あのときその選択肢は

これ以上ないほど僕に差し向けられていた








自由詩 氷河のながれ Copyright 吉岡ペペロ 2010-10-16 21:08:05
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