殺しの法悦
salco

ブヨブヨな意気地を腐った体とギガだせー服で包み
指先大の仮想世界で王様やってるチンカス野郎と違って
原寸大の実社会で膂力を持て余す益荒男にとっちゃ
徴兵制もねえユルユルまんこみてーな日本は窮屈極まりない国だ
ムショやドカっちが嫌ならガッコーなんつー予備刑務所で
あたら時間を浪費させられ魂を消耗させられる
それが何かの役に立つかと言や
勤労者すなわち従順な納税者を育成する一助でしかない
教育制度というザルでは
規格外の凶暴性を教化しえないにも関わらず、だ
宗教も然り哲学も然り精神医学も然り
煩わしい血縁の情動
ホット&ウエットなお神楽処
滔滔として恢恢な文豪人種の思索も然り
何故なら戦闘の為に生まれて来たオレの神経系統は
愛撫と攻撃、交尾と殺傷、生か死かの局面にしか興奮しない
中間域が無いのよ

事情通の自称ナントカ評論家
自己陶酔の自称オタスケ先生は
それを親のせい社会のせいにする
一面そうだろう
自己憐憫にひきこもり切れもしねえカミソリのお絵描きで
オトナの注意を惹きたがるよなお子様や
近場を彷徨い缶ジュース1本と引換にいじらせる
アウトドア依存症の場合はな
だが暴力いや破壊衝動は違うと思いますよ
自虐と嗜虐では、趣味としては裁縫と強盗ほど違う
その目的が殺しなら比ぶるべくもない
人喰いライオンをタマと呼ぶのはあんたの勝手だが
鞭や麻酔で飼い馴らせるのか? 
まず、行儀を仕込む飼育係が檻の中で食われるだけだね
牙を抜き爪を剥いだところで安心か? 
顎を外され四肢をへし折られても
そいつは唸りながら餌食を追って頭を巡らせいざり寄る
瀕死の体にもあんたは手を置けまいさ
剥製にしてから小屋でも作ってやんな

それを「心の闇」で片付け
昨日も明日もドタマを振り振り小銭を稼ぐコメンテーターども
お前の食欲は「心の闇」か? 
ションベンやクソはどうだ
睡眠は?
ココロ以前の、白日のタームじゃねえのか? 
お前らのお料理上手な奥方が
カート押して今日も経巡るスーパーの売場は
撲殺され扼殺され感電死し窒息死した死骸の山だぜ? 
精肉売場の通用扉が開閉した刹那に顔を打つ
あの甘ったるい風を嗅いだ事があるだろ? 
赤いスウィートピーとは違うが決して不快ではない
寧ろ官能をくすぐる匂い
あれ嗅ぐと、あんたも
後頭部に手を置かれたみてーにうっとりしないか? 
睡魔にも似て妖しく、どちらかと言や懐かしい
少なくとも奥方の芬々たる虚妄のフレグランスよりゃ
α波な匂いじゃね?
 
「鮮魚」を見てみな
その眼は実に垂涎の無念に見開かれ
口は鰓呼吸の絶息を止めて素晴らしく新鮮だ
枕を並べた鰯や晩酌の肴に齧る阿児の干物は
ダッハウやベルゲン・ベルゼンに山と積まれた囚人達の
痩せさらばえた遺骸を髣髴させると思わねえか? 
パッケージに押し込められた燻製ハムの皺ばんだ深紅色は
轢断の大腿から脱出した筋肉が
タンポポそよぐ線路端で乾いて行く牧歌を偲ばせねえか? 
鶏豚牛、鯨馬鹿羊兎合鴨七面鳥その他諸々
なるほど海産物や家畜は
お宅のお利口なチワワやペルシャとは違うだろうさ
だが命のどこに違いがある? 
生存本能の何に違いがある
網や屠殺場に自殺志願で入る畜生は1匹もいないぜ? 
病気や老衰で天寿を全うしたのもな

お前は食ってる最中その悲鳴を聞くか? 
怖い、生きたい、やめてと叫ぶ声は聞こえねえか? 
聞いたところで何とも思わねえだろ
それら死肉に味つけ煮て焼いて
あまつさえ生で食らいグルメを気取り 
陶然と咀嚼し食道に嚥下し胃袋を満たして腸を動かし
ケツをΩに乗せてクソをひり出し暗渠へ流す
確かに闇だよな
てめえらは意図的に殺戮を代行させる猛獣だ
冷蔵ブースが狩場つーワケ
理不尽な犠牲に謝しつつ骸を頂けば
霊魂とやらが成仏するってか? 
食物連鎖の頂きで夢見るワシントン条約だな

摂食と殺意は違うと? 
生理欲求ではあるにせよ、なるほど形質が異なる
だが近似の喜びを知らねえとは言わせない
女に突っ込んで支配の愉悦を味わっている間
その欲望の高揚の中に
相手を壊したいという衝動はなかったか? 
激しくぶつける腰の動きに
子宮口をぶち破るほど強く貫いて女をイかせたい、
自分もその絶頂の白光で目を眩ませたいという切望はなかったか? 
驚いた事に、女もそれを望んでいるのよ
実に高邁な愛情表現だよな

オレもお前らと中身は一緒だ
肉食や淫行に何ら呵責は感じない
ただ飽き足らねえからトレーシングペーパーの仕切り外した
つーだけの話
あるいはアタマに手突っ込んで辺縁系の通風を良くしたと言うべきか
お前らは生存本能の側面を「闇」と呼んでおのれの思惟から峻別し
安全圏に避難した気でいたいだけさ
だがそこは本当に明晰な場所か? 
アルツハイマーでも患い役立たずの形骸として無毒化されるまで
理性で「闇」に施錠し安逸に暮らし通せるホーム・グラウンドなのか? 
例えばあんたのちょっとした怒りや苛立ちはどこから来ていると思う
そんな時
あんたのエゴは真っ黒な醜いツラをしてねえか? 
その留飲を下げる方便には何を使ってる
キリストの金言か? 
そりゃ超人的な忍耐力が要るこったろう
半神半人のひそみに倣ってゴルゴタからの眺望を楽しむとはな
あるいはカルシウムの高裁法廷で取り急ぎ
腐った糠床から抜粋・列挙したおのれの長所・美点で抗告を開陳する
忸怩たる優越感か? 
それともその貧しい想像力で夜闇に乗じ
電信柱の陰からアイスピックでも揮って傷害致死事件を起こしてみるか
そんなゴ足労に適した靴もなく窓を開けるさえ面倒くせえなら
あんたの屋台骨にぶら下がる間抜けヅラのサンドバッグで気を晴らすか 
いずれにせよその時は
相手を劣位に置いて力勝る自分でありたいだろう
でなきゃ怒りは克服できねえ
まるでサル山の賑わいだよな?
 
まーせいぜい日々是好日を祈るがいい
お前ら寸止め人間がいくらスカシ込んだところで
この捕食の頂点・カニバリズムから逃れられはしない
無論、食われる側として
な?




自由詩 殺しの法悦 Copyright salco 2010-10-15 00:12:55
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