部屋の絵
番田 

無欲な僕は いつも 筆を持った
物の中には 形があると知った
そして 触れた 本のページを めくる時
僕は 人のこの手に 掴める物はなかった


光は 色の一つを 手渡した
僕は 手に取れない 形の気がした


光を錯覚に変えるものに
触れなかった


会話の内容を聞いた
ただの 幻想の気がした


風景を絵画に変える感覚ではない
今日も見た


部屋は ぼんやりと 人の声の聞こえない
道ばたに落ちた 枯葉の色の 夕暮れの近く
僕の 嘘ではない 感覚は ひとつ
いつも この窓に 立つ



僕は立った そして いつも人の声のない
通り過ぎる世界の 流れの果ての 明け方の近く
ひとり見た 絵を 虚無に変えた色を
ただ 僕は 木の形に描いた
そして 僕は 僕の色の 絵を描いた
地平線になびいた 雑木林を 意識の偽りに変えた自分へと



自由詩 部屋の絵 Copyright 番田  2010-10-13 03:13:29
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