私という余韻
見崎 光

目覚めの弱い朝
濃いめのブラックコーヒーと
アーモンドチョコレート
苦みで潤される喉をなぞるカカオの甘さ
寝ぼけた体が整えられていく

今日はどうやら天気が良さそうだ

もうすっかり冷たくなった風
煙草のメンソールが
やけに染みてくる
ひと吐きするごとに
紅葉しそうな草木を眺めながら
“今日”という響きを体感する


重そうに運ぶ足取りで居間へ向かうと
まだ小さい甥っ子が
いっちょまえに座って
テレビを見ていた
昔の記憶なんてものは薄くなってしまったけれど
食い入るその目につられて
朝から教育テレビを鑑賞
懐かしさで綻んだのか
可愛くて綻んだのか
定かではない微笑みに浸る私
合間にこちらを伺いながら
彼なりのひとときを楽しんでいる


朝食をとりながら
もう少しと付き合う傍らで
ぎこちない離乳食を頬張っていたかと思えば
余裕をなくして手早くシャワーを終えた先で
夢の世界へ冒険に出掛けている
お母さんといっしょのキャラクターが
テレビの向こうで独り遊びしてる光景は
とうに知っていたけれど
虚しさだけ拭えない

そんな朝だったりしながらも

気だるく身支度を済ませ
“いってきます”のキスを
忘れずに残していく





自由詩 私という余韻 Copyright 見崎 光 2010-10-08 22:07:59
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