寝帰り
小川 葉

 
 
真夜中の
高層ビルを写真に収めると
ワンフロアだけ
灯りが点いている
残業してる
君がまだ
一人だけそこにいる

+

掌に宇宙
君の掌にも宇宙がある
手をつなぐと
宇宙はまだあたたかい
その第三惑星で
私たちは生きている

+

戦場に
お花畑があるように
お花畑にも
きっと戦場がある
三半規管を右折すると
いきおいよく回る
戦争と平和



眠ったまま
私たちは生きている
時には夢を見ながら
空を見上げたり
高いビルから
何かを見下ろしたり
してるうちに
それが何かもわからないまま
とても永い眠りに就く
 


働きアリが
働いている
言葉を持たない
彼らが向こう側にいった時
はじめておぼえた言葉で
言うのかもしれない
疲れたと
それでも言葉の優しさを
信じている
その強さを
死ぬほどの
神の慈悲を得て



早朝
君は帰ってくる
たった一人の宇宙から
たった一つの惑星へ
そこには家がある
超新星
白色矮星
ブラックホール
ただ名前があるだけで
人は人でありつづける
君が望むなら
それが君の幸せだ
 


休日の朝
君がしたおなら
私たちの知らないどこかで
星が生まれ
星が死ぬ
今この時にも
君は寝返りを打つ
 
 


自由詩 寝帰り Copyright 小川 葉 2010-10-08 03:04:40
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