寝帰り
小川 葉
真夜中の
高層ビルを写真に収めると
ワンフロアだけ
灯りが点いている
残業してる
君がまだ
一人だけそこにいる
+
掌に宇宙
君の掌にも宇宙がある
手をつなぐと
宇宙はまだあたたかい
その第三惑星で
私たちは生きている
+
戦場に
お花畑があるように
お花畑にも
きっと戦場がある
三半規管を右折すると
いきおいよく回る
戦争と平和
+
眠ったまま
私たちは生きている
時には夢を見ながら
空を見上げたり
高いビルから
何かを見下ろしたり
してるうちに
それが何かもわからないまま
とても永い眠りに就く
+
働きアリが
働いている
言葉を持たない
彼らが向こう側にいった時
はじめておぼえた言葉で
言うのかもしれない
疲れたと
それでも言葉の優しさを
信じている
その強さを
死ぬほどの
神の慈悲を得て
+
早朝
君は帰ってくる
たった一人の宇宙から
たった一つの惑星へ
そこには家がある
超新星
白色矮星
ブラックホール
ただ名前があるだけで
人は人でありつづける
君が望むなら
それが君の幸せだ
+
休日の朝
君がしたおなら
私たちの知らないどこかで
星が生まれ
星が死ぬ
今この時にも
君は寝返りを打つ