どちらにしても風は吹き続けるのだから
ホロウ・シカエルボク






わたしのなかを
あなたのなかを


風がいちど
吹きぬける


あつくもなく
さむくもない


温度とは
呼べそうもない風


放浪、漂流、点在、葬送―住み処を
持たぬものたちには


すべてが
住み処でもある


わたしのなか、あなたのなか、吹きぬけてゆく



語らないものこそが
すべてを教えるのだ


心の衣類を捨てて
誇り高き輝きを見せなさい


肉体を持たぬ心なら
それは神だ


わたしは夜をあきらめて
指先のみで詩を紡ぐ
渇いて、きしむ眼(まなこ)の


浅いすり傷は
感情のしるしだ


夢魔よ
おまえが


この夜のサバスを
わたしから奪うと言うなら
わたしは
その洞穴を
引き受ける
真意となろう


わたしのなかに
あなたのなかに
ひとときの
風のわだち
そのわだちを


同じ目をした
ふたりの天使が
レイルのように
たどっている


教えはある、無垢な眼なら
それを
受けることができる


夜に目をひらいた
わたしは夜そのものだろうか
暗闇はわたしを
まじりけのない信者に変えるだろうか?
わたしはわだちを踏む
突然拭われたあとの


新しい
地面はやわらかい


わたしは泣き
そして許される
それは
しきたりのない告解である


あなたのもとにゆきましょうと
あらゆる言葉が言う
わたしは首を横にふり
わだちのむこうを探す


気づきませんか
風は吹き続けているのに
かたちを変えたのは
あのときだけなのです


すべてのものをはらい
此処をあとにするとき


新しいどこかに
おなじ影を見る


離れるとは
近づくことである
わたしはなにも





捨てたり
しなかった








自由詩 どちらにしても風は吹き続けるのだから Copyright ホロウ・シカエルボク 2010-10-06 07:17:00
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