小川 葉



むかし泊まった
民宿の部屋で
小説を書くことにした

スキーに来たのに
雨が降っていて
しかたなくこの民宿に
もう一泊することにしたのである

窓から雨の雪景色を見てると
夕飯の準備ができたので
食堂まで階段を降りていく
階段の下には
エロ本が積まれていた

私は私の息子のように
ジンギスカンを食べた
食べても食べても足りなかった
まだ子供なのである

父は私の食べっぷりを見て
とても喜んでいた
部屋に戻る途中
誰かがエロ本を部屋に持ちこんだ
気になって仕方がなかった

外はまだ雨が降っていた
民宿の部屋には
まだあの日の父の気配が残っていた
私は小説を書くことにした
女中がお酒をすすめたが
私は断った

雨が雪に変わっていく
カーテン越しに
それは音でわかる
静かなのだ
明日はのんびりと
春スキーを楽しもうと思った

朝目が覚めた
私は私の息子に起こされていた
なんとなく
関節がいたい
熱があるようだった
小説も春スキーも
今日は諦めることにした
肉が足りないとかなんとか
息子が妻ともめている
そのまま二人は仕事に
保育所に出かけていった

私はふたたび眠り
あの民宿の部屋を探しにいく
風邪で仕事は休むことにした
私は私の夢の世界に
もう一泊することにしたのである



自由詩Copyright 小川 葉 2010-10-05 05:10:07
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