今にらみつけて
瀬崎 虎彦

昨日の続きを生きている

私がぶれるはずはない
地球の地軸が揺らいでも
小夜鳴鳥が叫んでも

私の時間は連続し
コールタールよりも深く
インディゴに近い
沈黙にコロスを誘いながら
舞台から誰も去ることのない
演劇が展開されている
その唯一の演技者であり
観客であるところの
私の時間は連続する

道々に咲く花
枯れる姿を認めなくても
私の視界で咲き続けなくても
確実にそこにあって
手触りがあり
香り
私のために
不可知を飽和していた
道々に咲く花

振り返るのではなく
現在に気がついて
それを見出すことになる
これがそれだったのだと
過去形で発見するのではなく
これがそれなのだ
いまこそがそれなのだ
いまがそうなのだ、と
現在形で出会い、見つける

昨日から続いている
悔しさを
不満を
不快感を
今生きている

昨日から途切れることなく
今にらみつけている


自由詩 今にらみつけて Copyright 瀬崎 虎彦 2010-10-04 16:00:04
notebook Home 戻る