秋の日の女
はだいろ

昨日の大失敗を払拭したくて、
(そうしなければ、明日から耐えられない)
鴬谷へ。
自転車でぶらぶら、
ラブホテルを物色してると、
なんだか秋の日のいい匂いがする。
くだもののような匂い。
泣きはらした後の、すこしの深呼吸のような。

結局、いつものラブホテルのフリータイムに入る。
むかし、
「ふぞろいの林檎たち」で、
手塚理美が、時任三郎に、
「こんなにいっぱいホテルあるのに、
いつも同じところに入っちゃうね」
っていう台詞があったのを思い出す。
ほんとに、そうなのだ。
ま、ぼくは一人で入るのだけれど。


人気のある女の子に、
当日で入ったので、
時間も場所も指定され、
70分の短いコースになってしまった。
(ぼくはいつも、80分〜100分で遊ぶ。)
ホテル代がかかるので、
自宅に呼ぶよりお金が余計だけれど、
備え付けのコーヒーを飲み、
テレビを見ながら女の子を待つというのも、
なかなかおつなものだ。
窓をあけると、
谷中の墓地と山手線が見える。

ぼくのうちにはテレビがないので、
地デジがなんとかいうテロップがうっとうしい。
でも、
そのドキュメンタリーには見入ってしまった。
46歳の男と、23歳の女の子が、
ネット難民をしながら、
寄り添って日々を暮らす。
持ち金が、10万円しかなくて、
どうしても部屋を借りる初期費用が足りないのを、
自分もネットカフェ生活をしたことがあるという不動産屋のお兄ちゃんが、
助けてくれて、
やっと、部屋を借りられたとき、
ぼくはこころのそこから、
ホッとした。
こんな、遊んでるお金があるのだから、
貸してあげたくなってしまった。
なんだか息苦しくなった。
生活、それは厳しい。
幸せ、そしてそれは、誰の肩にとまるかわからない蝶々のようだ。


ぼくの肩には蝶々はいないし、
来た女の子は、
そりゃさすがに可愛かったし、
いちゃいちゃキスもたくさんできたけれど、
恋におちるには、
時間が足りなかった。
いや・・・
足りなかったのは、もっとほかの、何かなのかもしれない。
それがなんなのか、
ぼくにはずっとわからない。


明日は朝から大雨だって、
その子が教えてくれた。
手をつないで、
エレベーターの中でキスをした。
帰ってカレーをつくろう。
逃避している雨ざらしの現実のなかに、
幸せの萌芽は、
明日、
見えるだろうか。







自由詩 秋の日の女 Copyright はだいろ 2010-10-03 17:06:54
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