遊石は語らず
アラガイs


苦い思い出を語れというのならその昔
廃材置き場になっていた広い空き地の泥水路に丸太の橋が架かっていた 。
小学校から帰ると幼なじみの僕とK君はイタチのようにそこの盛り土に上がっては秘密基地など作って遊んでいた 。
ある時、K君が勇気を出してその丸太橋を渡ろうとしてたとき
何故か僕はK君を脅かしてやろうと 少し大きめの石を川へ放り投げたところ
運悪くK君の頭の角に当たってしまった 。
たちまちK君の頭は血まみれになり 泣きながら家に帰ってしまった 。

当然両親からはこっぴどく叱られ、罪悪感に困惑した僕はその日からしばらく危険人物にされた 。


僕は今でも後悔しているそれは
理由を聞かれたときに たまたま足で蹴ったらK君の頭に当たってしまった‥なんて、何故か下手な嘘をついてしまい単に脅かしてやろうと川へ向けて投げたとは言えなかったからだ。

あれ以来K君との親交はぷっつり途絶えてしまった。
そして何年後かには 僕はコントロールのいい少年野球の投手になっていた 。
もちろん クラスで指折りのガキ大将にもなっていたが、 あのとき放り投げた石が 僕の本当の気持ちを語ってくれていたなら
なんて
今では笑い話で石を語れるのに
時々人から誤解を受けたりすると
またあのときのように意図もしない出来事を誤魔化そうとしている弱い自分がいるように思えてしまう
何故か 。








自由詩 遊石は語らず Copyright アラガイs 2010-10-03 04:50:42
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