神様、二番地で消えて
ピッピ

100円玉2枚と10円玉何枚かを
レジのお姉ちゃんに渡して
ブランコの上で開けるプリングルスが
俺の中学校の時の夕飯だった
ある火曜日俺はいつものようにプリングルスと
その日はココアシガレットも買った
その時が最初で最後
神様を見たのは、さ

少年、
とそのオッサンはまず言った
煙草なんて吸ってるのか

ちっげえよ
これ煙草に見えんのかよ

当たり前だ
誰から見ても煙草を吸っているように
見せたいがために買ったんだ
見せたいがために
いつまでも舐めたり噛んだりせずに
口の端で抑えていたんだ

そうか

とオッサンは言った


何の用?

なんとなく察していたのは
オッサンがこの辺りの人じゃないということ
もともと観光地が近くて
旅行者がいっぱいいる場所だからいてもおかしくはない
ただ気になったのは
オッサンが手ぶらだったことと
こんな時間にいること
そしてもう一つは
俺のことを「少年」なんて呼びかける
類稀なるセンスの悪さだ


少年、
今は楽しいか?


酔っ払いだ、そう確信した

ただ酔っ払いの相手をするのは昔から嫌いじゃないと思っていた
親父も叔父もいつもこんな話をしていたからだ


いや、全然
今もさあ、こうやって塾の帰りに一人で飯食ってるんだ、
うち帰っても誰もいないからさあ
オッサンはここで何やってんの?


こうやって受け答えをしながら
俺はオッサンに不信感と
言葉にできないよくわからない感情を半々くらいに抱いていた


少年、
今お前は何が欲しい?


質問に答えろよ、俺は更に不信感を深めた。


そうだなあ…やっぱり金かなあ、父さんもリストラ寸前だって言うし
オッサンもこんな時間に徘徊してるってことはもうやられたか?
オッサン職業は何だったんだ?


少年、


俺が
おい!さっきから聞いてんだろうが!答えろよ!
と言おうとした
その前に


すまんな…


と言って涙を湛え始めた
俺は気が触れたと思って言うものも言えなくなった


少年、

顫える声でオッサンが言った

神様を知っているか?


当たり前だろ、


そう言うと、オッサンは消えた


嗚呼、なんだよ、俺は即刻理解した
最初から神様だって分かってれば殴り飛ばすトコだったのに
うまいな、あのオッサン、でもズルいな
そう思いながら俺は塾で習ったばかりの
「監督不行き届き」という言葉を思い浮かべて微笑した


未詩・独白 神様、二番地で消えて Copyright ピッピ 2004-10-20 20:34:35
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