バーカウンターの蛙
……とある蛙


カウンターの背の高いスツールに腰掛け
グラスに注がれたバーボン
氷のゴツゴツした表面を覆いながら滑り落ちる
琥珀色の液体にジッと
視線を這わせ

すでに結露したグラスを捧げ
グビリと一杯
喉越しにバーボンの爽やか香りと
冷たい液体が通る
胃に嚥下するや
熱い個体が胃の底にズシリと響く

会話もそこそこに氷をグラスに残したまま
一杯目を飲み干し
おかわりの一杯を注文する
ピーナッツを二粒ほど口に放り込み
また、バーボンをグビリと一杯

頭が次第に痺れてきて
網膜が壊れてゆく



直線のカウンターに
球を乗せた三角柱が一本
スツールは円盤を乗せた細い円柱で
三角柱が氷の入ったグラスを傾ける
もちろん氷は流行(はやり)の球体で
琥珀色の液体は発泡する液体で薄められ、

カウンター越しに
楕円形の円盤が媚を売る
扉の外にある今日を捨てに来た
三角柱は
少し躊躇して楕円を見つめる。

隣の席には菱形が
じっとグラスを見つめ
ため息を吐いているので
三角錐は酒をあおりながら様子を伺う

どうせ力も勇気も無いのだから
酒の力を借りるのもいいと
思ったか思わなかった
三角柱の僕は今日もしたたか酔っていて

グニャグニャの旧態(キュータイ)になり、
そのまま沈んでいった

そのあと不明


自由詩 バーカウンターの蛙 Copyright ……とある蛙 2010-09-30 16:39:12
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