流すひと
恋月 ぴの

用を足すだけなんだけどね

うら寂しい公園の片隅にあるのは決まって便所ってやつで

おおむね和式の便器しかなくて
紙なんか無くて
げげげのお友だちなんかの手が暗闇からぬらりひょん

べんじょ・べんじょ・べんじょ・べんべん

なんだか怖いんですけど!

そんなときに限って女はがまんできないんだから
近頃ティッシュって駅前とかで配られていないのを思い出す

便所じゃなくてトイレなんだよね
リニューアルされた駅ビルには豪華なトイレ
パウダールームなんておしゃれさんだから
ウォシュレットは当然だし
デート中のお化粧直しに気合入って
げげげのお友だちだって近寄りがたい気がするな

生死と相対する現場って無機質なんだよね

ハイヤーの運転手さんのような白手袋が恭しくも一礼すれば
台車に乗せられた棺は有無を言わさず火葬炉のなか

これって冗談でした!なんて許されるはずもなく

それだからこその斎場ってやつだから

大理石じたての前室にオマルがひとつ
おもむろに跨っては
にょろっと一筆書きを形見代わりにひねり出せるなら

人生の悩みなんてどこ吹く風とウォシュレットのボタンを押した




自由詩 流すひと Copyright 恋月 ぴの 2010-09-20 21:38:43縦
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