黄金の子 Ⅱ
木立 悟



からみあう木の根をくぐり
風のない海に出る
陸のほうへ 陸のほうへ
風は高く飛んでゆく
砂には浪が残される
浪のにおい 浪の色
浪のかたちが残される



雲は深く降りてきて
地に近づくほど鱗になり
緑に碧に透きとおり
夜の黄金の横顔となり
島の多い海を見つめる



砂の木に降る砂の金
海をわたる砂の背の鳥
天の河原を見つめる子
荒れ野をひとり巡りゆく子



魚は魚のかたちを残し
鳥は鳥のすがたを残し
草のたましいを過ぎてゆく
風をつかもうとする子の手のひら
羽に触れ 鱗に触れ
陽の色をした指を見つめる
傷のない痛みを見つめる



子が風をとらえたとき
鳥と魚と草と子は
そこに置かれ
そこに残された一瞬のなかで
ひとつの淡いたましいになる
青と灰と水と金
小さく小さくかがやいている



子はゆっくりと海を見つめる
幾つもの島の影
空を去る風の影
岬にひろがる荒れ野のなかの
混じり重なるたましいとして
降りそそぐけだものの声を聴く







自由詩 黄金の子 Ⅱ Copyright 木立 悟 2004-10-19 14:19:28
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