大人の休日
小川 葉

 
 
朝五時になれば
二階の廊下を軋ませて
起きていた
早起きの父が
祭壇の裏でまだ寝ている

ひさしぶりに
子吉川に
鯉釣りに連れていって
父に話しかけても
眠ったまま

あなたが死んだおかげで
一足早い
お盆休みがもらえたんだ
だから
連れていって
あの頃みたいに
日が暮れるまで

大人の休日は
なぜこんなにも
かなしいのだろう

親が死ななければ
まとまった
休日がないなんて
なぜなのだろう

私はしだいに
私に戻りかけていた
故郷の家で暮らしていた
昔の自分に
戻りかけた頃
都会の暮らしに
帰っていった

そしてまた
都会の暮らしに
戻りかけた頃には
四十九日
ふたたび故郷の暮らしに
戻らなければならない

いっそのこと
戻ってしまいたい

休日ではない
日常の
故郷の暮らしに
帰ることができるならば
 
 


自由詩 大人の休日 Copyright 小川 葉 2010-09-17 04:03:26
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