お母さんの右足
ゆるこ


新しい世界を見せてあげるとあの子は鳴いた

カモシカのような片足を震わせながら歌った子守唄

揺さぶられる、現実から見放した濁りすぎた瞳に

映る幾千の輝きはいのち
生命力が溢れ出した
それは蛍みたいに舞っていた

新しい世界がちらついた
あの子の瞳は緑に染まっていた
私は産声をあげたかった


世界が見えるよ
800万画素の世界が見えるよ
なんの補正もなしに
私の濁りすぎた瞳に映るよ

時折はしる黒い黒いノイズは心だよ
感情だよ
私の腐りかけた心だよ
美化されずに語りかけるよ


・・・・・・


カモシカみたいに美しく引き締まっていた
最後まで感覚はあったんだ
だから私は愚かしく鳴いた
だから私は愚かしく鳴いた


・・・・・・


硝子みたいな緑が私を識別する
あの子は足場を作りつつ私を手放した
それはとても悲しい指先で
脳内はずっと鳴いていた

森を走る右足は美しく
まるでそれはカモシカのようだった




自由詩 お母さんの右足 Copyright ゆるこ 2010-09-16 22:24:40
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