詩人たちの仕事
アラガイs


僕は詩人の仕事を知っている
それは薄汚れた靴下の匂いを残したままそのままを裏返しに吐き直し
美術館でこの絵はどうも臭いと鷲のような鼻で素人にはその説明を拒み
賞味期限に剥がれた壁紙の図柄をまえに猿が逆さまに眺めるのを見れば
珍味だ!と言って理由もなく感動することを


僕は詩人の仕事を知っている
青空を担保に
もしもにわか雨が風になり地上に降ることをやめたなら
象牙海岸あたりの砂漠に暮らすよりもハイドパークの塵拾いになりたいと
仮病を使いながら役場に申請書を出しにいく
たとえ署名が偽物だと気づかれても
その変装がけっして見破れることのないことを



僕は詩人の仕事も知っている
砂のない机の引き出しに骨と海を隠し
手の届かない星空を見つめては
窓の陰から誰かを思い浮かべる術に自ら涙する
それが乾かないうちに
狭いトイレのなかで便秘を堪えながら隠喩を一時間も繰り返す
そして尻を拭く紙には偽りがないと確信することを



そして僕は詩人の仕事を知っている
暁にはだれよりも先に死んで夜の闇となり
陽に閉ざされた碧瑪瑙の深い眠りが
さ・よ・う・な・らと孤独を聞き流す
やがて再び月灯りに照らされながら
その永遠に輝く贖罪を記した透明な死体を
ただ記憶と書かれた墓碑の下にひとり/埋葬しに出かけてゆくことを
睡花びらのように
僕は知っている







自由詩 詩人たちの仕事 Copyright アラガイs 2010-09-16 04:30:40
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