海月

水槽の上の毬藻は呼吸をしていない
濁った水の中でいつの間にか死んでいた

冷蔵の中の秋刀魚は泳いでいない
ビニール袋の中で腐敗していた

布団の下の畳は弾力がない
柔らかさの中で時間を刻んでいた

鍵がない
部屋の外に出たいのに
鍵がない

あの日の夕焼けが眩し過ぎて
影に向かって歩いた道
何処へ

扉の隙間から自分を覗く
その瞳から避けたいのに
鍵がない

窓の外には逆さまの地上
そっと片足を差し出した
鍵がない

鍵は君が握ったまま離さない


自由詩Copyright 海月 2010-09-16 00:40:58
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