September Sepals
小池房枝

薄紅のネム天辺に咲き残り夏の限りを見送っている

風に挿す飾りのようなミズヒキの合間をそっと抜けて行くもの
 
秋植えの球根花屋に並びます眠り姫おいで土の褥に

ベランダの雑草大事に見てましたアカマンマかな?シロマンマでした

葉の色が隠れるほどに萩の花ほろほろ咲いて風に揺れてる
 
夏物のスーツのポケットさぐったらオシロイバナの種が出てきた

 
夏からのつぼみを摘まずに咲かせたらミニバラますますミニバラになった
 
コスモスの苗首を切って植えました咲いてると花さらいが出るので

おじぎ草ピンク色した耳掻きのふわふわ触れたら胞子が舞いそう

ナトリウムランプの公園秋の夜の薔薇たち全員色彩不明


一群れの彼岸花咲くそこにだけ日差しに秋が透き通ってる

ヒガンバナ倒れたあとを見てごらん倒れてないなら倒れるところを

根の国の金魚ことしも彼岸花赤くひらめく空の水底

埋められた金魚らの揺れぬ赤い鰭 低く宙宇にヒガンバナ群れる

根の国の朱火は今年も燃え尽きて真っ直ぐ倒れる花は葉を見ず


キンモクセイ雨に打たれてオレンジの十字の雫ふるふるまわりに

金も銀も咲いてはいません少なくともこの風が来た道の限りは

咲いたのかまだなのかそれは分からないけれども風に香りが溶けてる

ひやひやと涼しい朝はアサガオもひんやりしていて透き通るピンク

美人咲きした朝顔の目印に糸をむすんで結実を待つ


百日を風がほどいてサルスベリ空気をすべって落ちる花びら
 
夏の花火の名残の火花百日紅青天今日も暑くなりそう


くず洪水 電信柱の足元に打たれたように溢れでたように

葛の花踏みしだかれてこの秋もこの山道を行きし人あり


雨なので何処も出かけず百合だけがただベランダでずっと咲いてた

ぴしぱしと昨夜の風の置き土産 今年生まれの青いドングリ
 
口を開けたイガに栗の実光ってる揺すぶったなら落ちてくるかな

風ごとにぱらぱら落ちる銀杏を拾いに行きます夜の校庭


水深むごとく夜道に湧き上がる虫の音 胸まで浸かりつつ行く
 
水色と黄緑の胴のギンヤンマ翅は夕日でみかん色してる

チャリならば遠目で道の毛虫らの軌道を読んで避けて走るよ

なつあかねアキアカネそして秋風と日差し行き交い揺れるトンボ池

二階まで今年もシャクトリやって来た飛んできたのか歩いてきたのか

さくらさくら毛虫にやられて丸坊主また咲いちゃおうか花芽ならできてる

お月見のススキの原にクモたちが今宵も今宵の網を織り掛けた


飼っていたわけではないけど雨蛙の風呂子ちゃんと窓子ちゃんが昔いました。 

秋風が撫で付けていった白鷺の背中が薄い飴色してる

カルガモがまた孵ったか九月だぞ?なんだコガモかまだ九月だぞ!

鳥たちが混群を作る季節かなまだ早いかな明るい山道

きらきらと川に魚がいてうれしい君も忙しそうだねカワセミ


晩夏解纜ともづなを解く声がする「船が出るぞ〜」アサガオが咲いた


短歌 September Sepals Copyright 小池房枝 2010-09-13 21:49:25
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