積木
たもつ

 
 
眠れない道路のために
枕を置いていく
だから手紙を書きたいのに
便箋が見つからない
右手の方に流れている川は
蛇行を繰り返し
やがて左手の方に流れる
そのためには橋を渡る必要があるけれど
さっきから一人の人が
姉のように立っているだけで
あまり暑さも感じない
今まで姉をもったことなどないので
よく見ればそれは蓮根かもしれない
そう思うと姉の作った蓮根の料理が
無性に食べたくなって
川をまたいで渡った
アミノ酸と同じうような構造式をもった物体が
川を流れていく
あれは誰の自転車なのだろう
可愛そうに流れていく
川が行き止まりになった所で右折する
地方財務事務所の前で
ひとつ買ってくれませんか
と男性に声をかけられる
どうしようか少し迷ったけれど
重そうなので、要りませんと
丁重にお断りした
ついでに、知りません、と打ち明けた
心が軽くなって
感謝の気持ちでいっぱいになる
いくつもの影や他のものを踏みながら
やっと床屋にたどり着く
髪型はお任せにして
持ってきた積木で
たくさんの家をつくり
たくさんの建物を壊し
その間に多くのことを学んだ
やっぱり積木はいい
いいよ、積木

 


自由詩 積木 Copyright たもつ 2010-09-11 12:50:32
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