誕生
たもつ

 
 
無精卵の内側から
殻を破ろうとする
判読不能な文字たち
その音だけが
暗く冷たい鶏舎に響く

昨日とは上空の風向きが違うのか
朝から火山灰が
あたり一面に降り積もっている
ヒトは文字を殺す
文字はヒトを殺す
簡単に言えば歴史であり
おそらく未来である

もう主人も雌鶏も帰っては来ない
それでも文字たちは
生まれようとする
何も伝えないために



自由詩 誕生 Copyright たもつ 2010-09-10 22:01:03
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