白いタイル
光井 新

 リクルートスーツとかマジありえねぇんだけどーきゃははははぁははは、とか言って左手で膝叩いて右手で指さしてたら、その女が奈津子だったから俺のちんこは死んだ。
 マジ勘弁なんだけど、このブサイク、死ねよ、就職活動だかなんだか知んねーけど、飢え死にでも何でもしてろや。吐きそ、ミートパティーの原材料がミミズに思えてきて、ハンバーガーを投げつけてやりたい。だからマック嫌いなんだよ、ミミズバーガーっていうイメージが記憶ん中に刷り込まれてるし、俺道化恐怖症だし。待ち合わせ場所にマック指定して、リクルートスーツで来るんじゃねーよ。
 キレそ、だからってキレたら負けだ、落ち着け俺。俺はいたって普通の感覚の持ち主だ、俺はブス専じゃねー、ブス専じゃねーのが普通の感覚だ、ブス専が異常なんだ。普通の人間は自分の彼女がブスだったらキレるだろが、だからってキレたら負けだ、マックで「こんのブサイクがーっ」なんつってテーブル持ち上げてほん投げたら異常だと思われる、ロボトミーされちゃう。

 その部屋には壁も天井も床も無く、ひたすら白いタイルがあるだけで、俺の名前は「被検体十三号」だった。
 白いタイルの向こう側にあるという「ドナルドを愛すべき世界」で、術前の俺はどうやら「テロリスト」と呼ばれていたらしい。


自由詩 白いタイル Copyright 光井 新 2010-09-07 13:13:34
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