友ー躓きー
……とある蛙

真冬の寒い日
葉がすべて落ちて
魚の骨が起立する
銀杏並木の坂を
ゆったりと降りて行く

僕は何の理由か気づかずに
気づかないまま
躓いてしまった
小石一つ無い道だったはずなのに
躓いてしまった

そんな僕と一緒に歩いていた君は
手を差し伸べて助けてくれようとした
手を差し伸べて助けてくれようとした。
僕は君の手で助からないと思い

僕はその手を払い除け
僕は何の理由も持たないで
僕はその手を払い除け
君の気持ちを振り払ってしまった。

それでもそのまま歩いて行けると
勝手に考えていたのだけれど
君はどんどん先を歩き
君は後ろも振り向かずに歩いて行き

君の背中は見えなくなり、
僕は懸命に追いかけて行ったが
ますます君の背は小さくなり、
そのうち坂の下に君は見えなくなった。

僕は一生懸命坂を降りて行ったのだが、
君は別の道を歩き始めたようで、
坂下の交差点で神社の方に右折しても
君の姿は全く見えなかった。

季節は変わり
空には下弦の月が浮かんでいる。
僕は降りてきた坂道をとぼとぼ戻って行く。
街路樹は黒々と葉が繁っていて
足元は暗くなっていた。

すぐ
また、僕は躓いてしまった。
両手をついて立ち上がろうとした時
下弦の月の中で誰かがにやっと笑った。
そして、聞こえてきたのだ。あの声が

あきらめの悪い奴だ って




自由詩 友ー躓きー Copyright ……とある蛙 2010-09-05 21:18:31
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