秋雨
見崎 光

早朝に雨が
鳴いている

目覚めもままならない夢現の耳元を騒ぐ
水の弾きと滴り
薄暗い窓辺は濡れたまま空を映す
うなだれ余した昨日までの日照りが
一清されるように流れる中で
肌を掠める風は
もう夏を忘れたと言い
目を保養する葉は
また秋を思うと言って
雨の声に頷いた


激しく鳴いて
優しく鳴いて
繰り返される強弱の雨声に
人恋しさを絆される
屋根を叩き伝う途
軒先を討ち伝う路
刹那に胸を締められる
耐えきれずに自らを抱き締め
また目を閉じた
タオルケットの温もりが雨音を消していく
遠く遠く遠く
意識の先では蝉が鳴いていて
扇風機が回っていて
風鈴が揺れていて
西瓜が食べ頃で…


早朝に
雨が鳴いていた
目覚めにはもう雨があがっていて
火照った大地が澄んでいた
いつもの席で煙草に火をつける
賑わいを過ぎ落ち着いてきた風景に
“移り”を受け止めずにはいられない
沈黙の燃え先を見つめながら
一緒に泣いてやれば良かったと
煙りを深く吐き出した






自由詩 秋雨 Copyright 見崎 光 2010-09-05 11:04:49
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