鈴鳴り
Akari Chika

私の小さな声が聞こえますか?
この小さな息づきが聞こえますか
心臓を
守って
眠っている

今にも落ちそうに
大きく揺れている 鈴の音は

広すぎる世界の隅々まで
響き渡らせるには
あまりに小さいけれど

命のように光のようにたまらなく遙か輝きたくて
その身を鳴らしているのです

花を挟んだ

昨日見た
夢の
潜水艦

軒下のメリーゴーラウンド
雨粒が
映す
歩道橋

手を取り合って
帰る子どもたち
カーブミラーに
映る
落葉樹

曲がり角で
丸い傘を閉じて
新鮮な世界に
感謝する

夢の続きは
見られなくても
今日を美しいと思える
そんな人でありたい

実際に声が聞こえますか?
この小さな息づきが聞こえますか
ひたむきに
耐えて
起きていく

糸が切れそうでも
懸命に揺れている 鈴の音は

深い湖の底まで
響き渡らせるには
あまりに無力だけれど

互いに手をつなぎ頷き合い存在を確かめたくて
その身を鳴らしているのです

私が
この世に
鈴を垂らした日から
私は
この世に
生まれたのです

一瞬にして
消えてしまう音でも
この小さな息づきを聞いてほしい

優しく包むように包まれるように愛を知りたくて
今日を生きている
から




自由詩 鈴鳴り Copyright Akari Chika 2010-09-05 10:36:59
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