みんな、おしまい。
真島正人


中途半端な気持ちで
ハウ・ドゥー・ユー・フィール?
と問えば
こぶしがかえってきた

涙が流れ出る夏
涙があふれる夏

みんなからだがおかしい
脳のどこかもおかしい

情けない


炎天下
灼熱の炎を
鵜呑みにした
みんな目をつぶって
ごくんとやってる
ごっくん
ごっくん
おいしいなぁと
つぶやいた人から順番に
体が粉々になる
飛び散って、
おしまい
その粉があたった人も
おしまいになる

みんな、
おしまい
銭銭銭

あーあ
欠伸をした
目じりに涙
たまった
なんか
嫌になった
疲れが
たまってきた
球状の皮膚が
ぶら下がっているのが見えた
ここは
喫茶店
汗がじゃんじゃん流れる
ごしごし
みんな
流れ出るもの
吹き出るものを

それが汚いものであるかのように

ふき取る

えいやさぁ
えいやさぁ

ごしごし

うかつだった
笑ってしまった
笑いを隠すために
談話を一つした

ねぇ、T君
君は知ってるかい
ここの喫茶店、農園って名前じゃないか

うなづくT君

前は田園だったんだぜ
何で名前が変わったか、知ってる?

くびをふる、T君

特別に教えてやるよ、
あのな、
ここでいっぺん
蚊が大量発生したことがあってな
マスターの奥さんが
蚊に刺されて
日本脳炎になったんだ
それでしんじまったんだ
だから、それ以来、
喫茶店の看板を付け替えて、
農園
さすがに「脳炎」
じゃ
まずいからな
田園→農園
そんな意味が
隠されていたわけよ

笑う僕
マスターがやって来て

ごつい
こぶしを
食らわした

ぐわぁん

ちょっと
ちょっと

許してくれよ
疲れてるんだ

皮膚はまだ柔らかい
おっぱいよりも
柔らかい

吸い出してくれよ
あいつらみたいに

悪いものを

ヘンなところだな
ここは
この辺の
名前は何だ?

※※※

スタンガンみたい
短い電流が
走る

夏はまるで
外科医だ
メスを持って
人間の腹を切り裂く

季節だから
しょうがないんだ

僕は小さく丸まり
突入していく


自由詩 みんな、おしまい。 Copyright 真島正人 2010-09-04 13:42:38
notebook Home 戻る