Is she alright?
Akari Chika

割れたコップ
壊れた冷蔵庫

彼女はいつも苛々してる

こぼれたチョコチップ
鳴らない電話

唇を噛んで
その場をやり過ごす

いつだって
繋がってたいんだって
毎日笑って
楽しくて
寂しさを感じる暇もないくらい

輪になって
踊って
恋をして
キスをして
いつだって
ときめいてたいんだって

でも
彼女はいつも苛々してる

ラジオから
流れる歌に
飛び付いて
必死でメモをしても

その歌が
何を問い掛けてるのか
知りたいと思わない

ドライブで
海に来て
波に飛び込んで
太陽を見上げても

身体が
何を求めてるのか
本当は分からない

あなたが
幸せでなくても
誰も気にしない

あなたが
笑顔でなくても
誰も泣かないよ

だから
彼女は苛々してるの

いつだって
触れ合ってたいんだって
肌を寄せて
温度を乗せて
恋しいと思う暇もないくらい

走って
空飛んで
若くって
いつだって
“新しい自分”でいたいんだって

でも
彼女はいつも自分が嫌い

水が落ちる
音を聴く
雨と涙が重なって

彼女の頬を濡らす

切れないハサミ
汚いメモ

彼女は愛おしい、と呟いた

虫くいのブラウス
錆びた指輪

似てる、と思った

紙袋から
こぼれたチョコチップを
拾い集めて
一粒かじる

あなたが
欠陥品であっても
誰も治さない

あなたが
不在の世界でも
誰も困らない

でも
彼女はもう苛々しない

真夜中の時計も怖くない

涙には光
雨には虹
人には心


備わっていると
知ったから

彼女は繰り返し
電話を掛けて
また出会って
恋をして
夜通し帰らない

でも
早朝の霧を見て思う


“何もいらない”


手には携帯や
大量の買い物袋
耳にピアス
染めたばかりの髪

数百人の連絡先
来月も真っ黒の手帳

アルコールの息を吐いて

微かに喉を震わす

「おはよう」

賢くって
ユーモアがあって
無敵だって思ってた

疲れない身体を
求め
渇かない心を
欲しがった

そして
いつだって
繋がっていたかった彼女が

初めて
世界と繋がった

あなたが
帰っても
誰も迎えない

あなたが
独りでも
誰も支えない

だから
彼女は寂しかった

朝日が昇る
音を聴く
空の角度が変わり

彼女のまつ毛に
光を落とす

瞬きも惜しいほど
朝に
恋をした

明日は欠陥品
未来は欠陥品
世界も欠陥品

でも
彼女は苛々せずに歩き出す

手にした荷物は抱えたまま

この上なく
満ちたりた表情で。


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これは彼女の物語

あなたは今も苛々してる?




自由詩 Is she alright? Copyright Akari Chika 2010-09-02 22:57:42
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