青の朝
石黒あきこ
ともだちみんなに責められて
泣きながら土下座をした夢から目覚める朝
からからと窓を開けると
こいびとが
摘んだ花を差し出して笑っていた
洗濯物のすきまから
「どうして?」って訊いたら
「もうすぐ巻き終わりだね」って云って
そう云ったこいびとは
花を持つ腕をぐんと伸ばし過ぎていて
それがノイズ混じりのテレビ画面みたいだったから
そうね、と少しほほえんで
わたし、小さな羽虫になった
(四方の扉をぜんぶ閉めると
(骨が崩れていくんです
(階段を上っていくと
(世界が一段ずつずれていって
(死にたくなるんです
静脈の青は平行線を辿っていて
塗り固めるニスが足らなくて
わたし、羽虫のまま
トンネルの先で待ちわびたのだけれど
幼子が残したままの砂利道から
あまりにも柔らかすぎたかかとが
そらのかたさを蹴り上げて
/そこに、白線
朝日が乾いた青をほどいていく
夢で
泣いた感触がまた頬をつたい
こいびとの
過剰な腕を切り取ればよかったのだと
洗面台に花を一輪ずつ
数え並べながら
わたし、
こんなふうに生きている
詩と思想2010年3月号読者投稿欄選外佳作