袈裟懸けメロウ日記
カンチェルスキス









 目覚めたのは何時でもいいだろ
 パンの朝食でコーヒーを飲んだ
 新聞を読んだ
 もうその記事など一つも覚えてない
 世界が反転すると何色だ?
 反転することはないから何色でもない
 夢から覚めたやつが間違った夢をふくらませる
 部屋のふとんに寝転がって本を読みながら
 おれはコーヒーを飲む
 映画は観ない
 映画なんてカラオケ屋の映像みたいなものだ
 時代遅れで大げさでないものねだりで
 嘘っぱちだ
 おれは焼酎のロックを運んでくるカラオケ屋の女に声をかけ
 店を出る頃には何とかなってるほうが好みだ
 ずっとテレビで漫才が流れていて
 脈絡のない言葉でふっと笑ってしまうけど
 本当におかしいことはこんなものじゃない
 ああ
 鼻をかみたいがティッシュの箱が遠くて
 面倒くさいから手元の新聞紙で鼻をかむ
 おれの鼻のしたが黒くなってるのを
 誰かがかぎつけて取材しにくる
 明日の朝刊の見出しにでも載せるんだろう
 おれは極端に言うと一人暮らしで
 前から気づいてたけど
 キッチンの隅に座って
 固焼きそばを啜ってるやつが一人いるが
 おれはそいつと知り合いではない
 極端に言うと水道代もガス代もおれが払ってる
 まぶしい太陽というやつが曇りガラスの向こうで
 口ごもる
 道端の葉の下の影が今日もちゃんとあるんだろう
 風に揺れたら形が変わったりして
 固焼きそばを啜り終えたあいつは
 今頃になってスーパーのパックの寿司を食ってる
 固焼きそばと寿司を交互に食えないばっかり食べの新人類だ
 おれはテレビの漫才のほうに気を取られ
 なぜ漫才師のどれもが「ええ加減にせい!」で終わりたがるのか
 すごく疑問に思った
 あいつは結局ガリは全部残した
 おれは三杯目のコーヒーを飲み終え
 片手で読んでた文庫本を両手で読む
 こうすると腕の筋肉がつくとあいつに言われたのだ
 おれには腕の筋肉が必要なのだ
 この六畳ばかりのこの部屋の家賃は
 極端に言うとあいつが払ってる
 
 










自由詩 袈裟懸けメロウ日記 Copyright カンチェルスキス 2004-10-17 17:36:25
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