スカイツリー
大覚アキラ

白い塔の表面を
カッターナイフで削ってみると
そこから
赤い血が滲んできたので
包帯を巻いてやった

それが正しいやりかたなのかどうかは
知らない

コンビニのゴミ箱に捨てられていた
薄っぺらなパンフレットにはこう書いてある

この白い塔の
陶器のように透き通った白
その半分は
おもしろ半分に殺されたあらゆる生き物の
骨から抽出した成分でできていて
あとの半分は
どこにでもある
ごくありふれた金属でできています

どうでもいいエピソードだ
パンフレットにはこんなことも書かれている

塔の最上階には
最新型のプラネタリウムが造られていて
選ばれた子どもたちだけが
そこで
うつくしい人工の星空を見るのです

おれは
もう子どもじゃないので
そのプラネタリウムを見ることはできないけれど
できることなら
おれの子どもにはそれを見せてやりたい

白い塔から
真っ赤なリンゴがひとつ
スローモーションで
落ちてくる

そのリンゴが地面に叩きつけられて
粉々にはじけ散って
アスファルトの上の薄汚い染みになる
その直前の
0.001秒の瞬間に世界を凍らせて
その瞬間が永遠につづく

そんなことを想像をしながら
おれは
白い塔の真下で
死んだふりをする





自由詩 スカイツリー Copyright 大覚アキラ 2010-08-25 14:02:10
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